虐待の証拠を集める
まだ虐待を報告する準備ができていない場合でも、証拠を集めることが重要です。例えば、住宅、居住権、離婚や子供の親権など、将来における権利行使に役立つかもしれません。
家庭内暴力はフランスの法律で禁止されています。あなたのパートナーや元パートナーがあなたやあなたの子供に対して虐待的な行動を示している場合、あなたは申立をすることができます。
警察に申立を行うと、警察が捜査し、「procureur de la République」と呼ばれる検察官に申立が転送され、検察官が事件を担当し、今後の対応を決定します。
任意ではありますが、フランスでは特に複雑なこれらの手続きについて、アドバイスや手助けをしてくれる弁護士に依頼することをお勧めします。弁護士のサービスを受けるための資金がない場合は、費用をカバーするための法的支援「aide juridictionnelle」を申請することができます。
フランスでは、保護措置は警察ではなく、裁判官が決定します。
申立は、あなたが経験したことに対して司法的な解決を求めるための重要なステップです。
このステップは、安全、居住権、住宅、離婚や子供の親権に関する今後の申請においても必要となる場合があります。
警察は、場合に応じて、虐待の加害者を、48時間以内の短期間において、直ちに勾留することができます。これは拘留または「garde à vue」と呼ばれています。これにより、捜査の前倒しが可能になりますが、有罪判決が出されたわけではありません。
しかし、家庭内虐待の申立をした後の手続きには、非常に長い時間がかかることがあります。近年は改善されてきていますが、まだまだ課題も多く残っています。
残念ながら、フランスの司法制度に関わるときは、忍耐強く、積極的に行動しなければなりません。これは、生き残りをかけているときは、特に困難を生じさせる可能性があります。
もし、正式な申立を行う準備ができていないと感じたときは、まず、性別に基づく暴力被害者のための多言語オンラインチャットサービスを通じて、警察にオンラインで虐待を報告することができます。
警察は、状況に応じて助言をしたり、必要であれば警察官を派遣してくれたりします。
希望する場合、やり取りは完全に匿名で行うことができます。しかし、最も深刻な暴力事件や、あなたが18歳未満の場合、警察には、「procureur de la République」と呼ばれる検察官に事実を報告する義務が生じます。検察官は、調査を行い、場合によっては暴力の加害者を起訴することを決定できます。
この書面でのやりとりに続いて:
申立(plainte)は、捜査開始のきっかけとなる正式な行為です。
記録(main courante)は、報告された事実を単に記録する公式文書ですが、通常、捜査開始のきっかけにはなりません。
家庭内虐待の場合、警察官は「plainte」の代わりに「main courante」を提出するよう提案する権限はありません。ただし、あなたが「plainte」よりも「main courante」を希望する場合は、あなたにはその旨を申し出る権利があります。
注記: 家庭内虐待の場合、警察は「main courante」を検察官(procureur de la République)に送らなければいけません。そして、暴力が非常に深刻であると考えられる場合、検察官が調査を行い、場合によっては虐待の加害者の起訴が決定されることがあります。
あなたがフランス語を話せず、警察があなたの権利を尊重しないのではと心配な場合は、このレターを警察に提示してください。
警察署の受付に着いたら、受付の人に「慎重に対応してほしい」と伝えるとよいでしょう。
彼らはいくつかの情報を提示するようにあなたに求めます。
また、希望すれば、ソーシャルワーカーや心理士との面談を依頼することもできます。これは、訪問先の警察署に専門職員がいるかどうかにもよります。
また、虐待を受けた人を支援する専門組織の連絡先を教えてもらうこともできます。そのような組織は、associationと呼ばれます。
その後、捜査員が面談(audition)を行い、あなたの供述を記録します。
希望する場合、「procureur de la République」と呼ばれる検察官に「plainte」を郵送して提出することができます。弁護士や「association」に依頼すれば、レターの作成や送付について手助けしてもらえます。
その後、「procureur」はあなたの申立書を警察署に送り、警察署が捜査を担当することになります。
そして、「commissariat de police」または「brigade de gendarmerie」と呼ばれる警察署に招かれ、面談(audition)であなたが話した内容を記録した書面が作成されます。
郵送で申立を行う場合は、以下の手順で行ってください。
「audition」のために「commissariat」または「gendarmerie」に同行することを弁護士に依頼することができます。
捜査担当者は、あなたが話した内容を文書として記録します。この話し合いは、面談(audition)と呼ばれています。知っておくべきこと:
担当者は状況を十分に理解するために質問をし、「grille d’évaluation du danger」と呼ばれる状況の緊急性を評価するための書類を、あなたと一緒に記入します。質問には以下が含まれます。
また、証拠があるかどうか、目撃者がいるかどうかも聞かれます。証拠や目撃者は、必須条件ではありません。捜査することで見つかることもあります。
「audition」の最後に、警察官から「Unité médico-judiciaire (UMJ)」と呼ばれる専門医療部門の医師の診察を受けるよう勧められます。通常、警察官がこの医師に予約を取ってくれます。
知っておくべきこと:
面談(audition)の最後に、3つの重要な書類があなたに渡されます。
残念ながら、あなたの申立に対して警察が取る措置は、あなたに自動的に知らされることはありません。
事実関係が深刻なものであると警察が判断した場合、虐待の加害者を呼び出して尋問することもあります。事実関係の重大性によって、加害者が召喚されることもあります。
注記: 「audition」の実施時期や、「garde à vue」の終了時期について、自動的に通知されることはありません。ですから、加害者からの報復に怯えている人は、安全策を講じることが大切です。
虐待の加害者とまだ一緒に暮らしていて、家にいても安全が確保できない場合は、「Juge aux affaires familiales」と呼ばれる家庭裁判所の裁判官に、自宅が加害者名義の場合であっても、加害者を自宅から退去させるように申し立てることができます。これは保護命令「ordonnance de protection」の一部として行われ、1週間かかることもあります。
その間に、警察に緊急の宿泊先を探してもらうなど、他の解決策を模索することができます。
また、自宅にある荷物を取りに行くときに、警察にも一緒に来てもらうことも可能です。
診察の際、医師の役割は、たとえ身体的な痕跡が残っていなくても、虐待があなたの健康に及ぼした身体的・心理的影響を評価することです。
あなたが受けた虐待と、それがあなたに与えた影響について、詳しく説明することが不可欠です。これは非常に難しいことかもしれませんが、将来、自分の権利を行使できるようにするためには不可欠です。たとえ辛くても、あなたの健康に与えた影響を過小評価しないようにしてください。
診察が終わると、医師は「Incapacité temporaire de travail (ITT)」と呼ばれる診断書を作成し、数値を記載します。この数値の目的は、虐待が心身の健康に及ぼした影響の深刻さを評価することです。これは、刑事訴訟において裁判官が考慮することになります。
終了前に、「UMJ」の医師には、
警察は、「mis en cause」と呼ばれる虐待の加害者を捜査・尋問します。
事実関係の重大性によっては、加害者が警察署に呼び出されることもあります。
注記: 「audition」の実施時期や、「garde à vue」の終了時期について、自動的に通知されることはありません。ですから、加害者からの報復に怯えている人は、安全策を講じることが大切です。
虐待の加害者が事実関係を否定した場合、警察は「confrontation」と呼ばれる加害者立会いのもとでの面談を提案します。例えば、虐待の加害者があなたに対して虚偽の告発をする場合など、残念ながら、あなたが出席しないことが不利になる可能性があるため、出席することを強くお勧めします。サポートが必要な場合は、弁護士を同伴させることができます。
事件の複雑さにもよりますが、捜査は数週間から数か月かかります。
事実関係が非常に深刻な場合、「procureur de la République」は、暴力の加害者を拘留(garde à vue)した後、ただちに裁判を行うことを決定できます。これは「comparution immédiate 」と呼ばれます。
残念ながら、捜査の進捗状況は自動的には通知されません。
捜査の進捗を把握するには、2つの方法があります。
捜査の過程で、警察は事件を担当する「procureur de la République」と呼ばれる検察官に報告書を送ります。あなたに情報が提供されることもありますが、これは残念ながら自動的に行われるものではありません。
最終報告を受けた「procureur de la République」は、その手続きについて決定を行います、。以下の事項を決定します。
通常、その決定は、あなたが申立を行ったときに記入した住所に郵送で通知されます。しかし、このようなことが起こらない場合もあります。
数週間が経過しても何の連絡もない場合は、「procureur de la République」に連絡して、手続きの進行状況を確認することができます。連絡先を調べるには、このディレクトリを使用して、郵便番号を入力し、「tribunal judiciaire」を選択します。
「procureur de la République」の決定に同意できない場合は、「appel」(上訴)を行うことにより、裁判官の判断を仰ぐことができます。これらの手続きを行うにあたって、弁護士を雇うことを強くお勧めします。
もし「procureur de la République」が被疑者を法廷で裁くことを決定した場合、裁判官が証拠を調べ、様々な関係者の陳述を聞くことになります。
申立を行ったときは、指定した住所に「convocation」と呼ばれる文書が届きます。この文書は、法廷での証言(audience)をするため、法廷に出頭するようにあなたに要請します。日付、時刻、場所が指定されます。
裁判での審理に同行する弁護士を雇うことを強くお勧めします。
知っておくべきこと:
裁判の終了時、裁判官は被告人である加害者が有罪か無罪か、またその量刑を決定します。以下の事項が決定されます。
裁判官の決定に同意できない場合は、弁護士を通じて上訴(appel)することで、別の裁判官に審理を求めることができます。
警察は、家庭内虐待の記録(main courante)の作成を提案する権利を持っていません。「main courante」は、虐待があったことを宣言するための手段に過ぎず、その後に何らかの措置が行われることはありません。
また、あなたの申立を拒絶することで、警察官は法律に違反することも知っておく必要があります。法律違反を通報することができます。
注記: 虐待の証拠を残しておきたいが、虐待の加害者を裁判所で訴える準備ができていない場合、あなたには、記録(main courante)の作成を請求する権利があります。しかし、家庭内虐待の場合、警察は「main courante」を「procureur de la République」に送る必要があります。事実関係が非常に深刻な場合は、捜査を実施し、場合によっては虐待の加害者を起訴することを決定することもあります。
フランスの司法制度に保護を求めようとして差別を受けるのは許されないことですが、残念ながら今でもこのようなことが起こっています。
この差別を報告し、それによって生じた損害の補償を得るための解決策があります。詳細をご覧ください
「procureur de la République」は、捜査の進捗状況や虐待の加害者に関する決定をあなたに通知しなければいけません。残念ながら、これが行われないことがあります。
数週間が経過しても何の連絡もない場合は、以下の手順で担当の「procureur de la République」に連絡をすることができます。
フランス語が話せない方は、このレターを持参して警察署に行くとよいでしょう。このレターは、あなたが申立を行う際に、通訳を同席させる義務があることについて、警察に念を押すものです。
実際には、あなたの言語に対応した通訳がいるかどうかにもよります。もう一度、来るように言われることもあります。
他にもいくつかの解決策があります。
はい、一定の期間内であれば可能です。これは、法律で定められた「délai de prescription」と呼ばれるものです。法的期限は以下のとおりです。
フランスでは、危険な目に遭ったときにあなたを保護するのが警察の役割です。警察官には、いかなる差別もなく人権を尊重する義務がありますが、残念ながら今でもそのようなこと(差別)は起こっています。
あなたは、申立を行う際に、あなたが選んだ人を同伴させる権利があります。
不安を感じるときは、郵送で申立を行うこともできます。それでも、警察から呼び出しを受け、面談(audition)で質問に答える必要はあります。
地域の「commissariat de police」または「brigade de gendarmerie」に出向くことができない場合は、郵便で申立を行うことも可能です。
それでも、警察から呼び出しを受け、面談(audition)で質問に答える必要はあります。その際に、移動が困難であることを伝えるとよいでしょう。
家庭内虐待で有罪判決を受けたとしても、虐待の加害者が自動的に刑務所に入れられるわけではありません。また、裁判官は以下を決定することもできます。
いずれにせよ、裁判官が決めることであり、有罪判決が出ても、あなたの責任ではありません。
虐待の加害者が、自分の行動に責任を持つ唯一の人間なのです。
可能であれば、申立を行う前に準備することができます。証拠を集め、重要な事実関係と日付を書き留め、面談(audition)の際に持っていくとよいでしょう。
弁護士や、虐待被害者の支援を専門とする「association」と呼ばれる無料サービスを提供する団体に同行してもらうことができます。
申立を行う際には、間違いがないように、最善を尽くしてください。たとえば、日付がわからないときは、作り話をしないことです。小さな詳細情報であっても、あなたのパートナーや元パートナーが、それらが虚偽であることを証明することができれば、あなたの事件に悪影響を及ぼす可能性があります。
詳細を忘れても心配ありません。申立書にさらに補足を追加するには、直接に、または郵送で「complément de plainte」(申立書の補足)を提出する必要があります。
申立を行い、保護措置を請求することは、あなたが有効な在留資格を持っているかどうかににかかわらず、あなたの権利です。
フランスでは、暴力を受けた場合に警察に助けを求めても、有効な在留資格を持っていないことを理由に拘束されることはありません。
もし、警察があなたの権利を尊重しないのではないかと不安がある場合は、このレターを提示して、警察に対して、あなたを拘束できないことを確認させることができます。
可能であれば、身近な人や、外国人の権利を専門とする「associationと呼ばれる無料サービスを提供している団体に、申立をしようとしていることを伝えてください。そうすることで、万が一、警察官が法律を守らない場合でも安心です。
警察の役目は、フランスの居住権を持たない人々に対しても、その状況に関わらず、すべての人々の安全を確保することです。警察官はあなたに助言を与え、週 7日24 時間いつでも支援を提供できます。以下の 4 種類の方法で警察に連絡できます。
「Centres d'Information sur les Droits des Femmes et des Familles (CIDFF)」は、次のような多くの分野で、一般の人々、特に女性の支援を行っています。法的権利、健康、雇用検索、トレーニング、事業創出、さらには保育所まで。
「Associations 」は、幅広いサービスを提供する組織です。
虐待の証拠を集める
まだ虐待を報告する準備ができていない場合でも、証拠を集めることが重要です。例えば、住宅、居住権、離婚や子供の親権など、将来における権利行使に役立つかもしれません。
差別を経験した場合の対処方法を知る
差別は、フランスの法律で禁止され、処罰の対象となります。公的組織または民間組織から差別を受けた場合は、あなたの権利を守るための選択肢がいくつかあります。
フランスで弁護士を依頼する
弁護士は、法的手続き全般にわたって重要な役割を果たします。信頼できる弁護士を選ぶことが重要です。弁護士は、刑法、家族法に関してあなたを支援し、また行政機関に関連するあなたの権利を擁護します。